日本画家 澁澤卿

2010年04月

アトリエの窓の外に崖からせり出して咲く大きな山桜の花びらが風に乗って舞い、雄リスが大きな声を上げて雌を追って枝から枝へと飛び回り、鶯もホーホケキョとうまく鳴けるようになり鎌倉も春爛漫といったところです。3月31日から4日間京都と奈良に取材に行ってきました。関西方面の取材には35年間もお付き合いさせていただいているニシムラ美術の西村行雄氏が同行して下さるのが慣例となっております。彼は私より10歳年上です。近江出身で幼い時より親戚に当たる京都の古美術商の老舗善田昌運堂で修行し私と出会った頃に銀座に店を構えて独立しました。書画骨董の見識に優れ画商仲間にも一目置かれている存在です。絶対損をすることはしない近江商人の西村氏が澁澤を応援しているきっと将来ものになるかも、そんな噂が、まっすぐに美術界の坂道を歩いてくる私の大きな後押しになったと実感しております。京都大丸・大阪近鉄での数々の個展も企画して成功させていただきました。取材や展覧会で京都に来ると京都の画商さんたちを誘って美味しい店でご馳走になり、祇園のクラブの梯子酒、仕事できたのか遊びに来たのか分からなくなる日々を送っていました。でも今では、二人とも60を過ぎてお腹は飛び出て医者からは食事制限が言い渡され今回も美味しいものを少しだけ食べて芸者の置屋が一部改装して開いているスナックで花代のかからないお座敷帰りの舞妓さんとおしゃべりをして早々に私はホテルに、西村氏は京都の別宅に引き上げました。前回からはニシムラ美術の跡取りの幸頼君も取材に同行して運転を受け持ってくれています。ホテルは加茂川の畔に建つ会員制のダイヤモンドソサエティが定宿です。先々代の社長が私の絵を多く収蔵してくださりハワイマウイ島に私となぜかダリの二人の美術館付のホテルを造り完成記念に家族を招待して頂いた縁があり会員になって利用させてもらっています。今はハワイの美術館は結婚式場になってしまい私の絵たちは日本の当ホテルの美術館に収蔵されております。当日京都のホテルのロビーにはなつかしい私の櫻の絵が飾ってありました。墨絵のような絵が好きだった社長でしたから地味な絵ばかりを収蔵しております。肝心の取材というと櫻は満開で最高でした。しかし何処へ行っても人人人しかもここ数年外国人の観光が増えて韓国語・中国語・英語・何語か分からない言葉がとびかっています。私の画業には良い影響が出ているのですが年々火が点いている仏像・寺院ブームで日本人の観光客も増えたようです。静かな縁側で美しい庭を鑑賞し、薄暗い本堂で静かに合掌してお参りをする本来のお寺の風情は今ではありません。皆様は私の絵の中でそれを感じてください。奈良では朝方雨に降られました。明日香の畑のあぜ道を春雨に打たれながら飛鳥寺や橘寺を遠方から取材しました。霞む後ろの山々が雲の動きに形を変えて見え隠れする様は、私の制作欲を充分満たすものでした。しかし雨に濡れたためか戻って暫らく風邪ぎみです。岡山天満屋の個展も近づいてきていますし、12月上旬には阿倍野近鉄での個展も企画されています。実際には観ることが出来なくなった静かな京都・奈良を観に会場にお越しください。